ただいまご紹介にあずかりました永利恭子です。お話をさせていただく前に、このコロナ禍の大変な中で、このような会を企画し実行してくださいました実行委員会の皆さま、「大野城投票率あっぷの会」の皆さまにお礼を申し上げます。大野城市に、選挙や民主主義について真剣に活動されている方々がいらっしゃることを誇らしく思います。
私は1962年(昭和37年)福岡市で生まれました。現在59歳です。家族は夫と、はたちになる大学生の娘が一人います。幼稚園の頃から筑紫野市に住み、二日市小学校、二日市中学校、県立筑紫丘高校で学び、九州大学法学部を卒業しました。大野城市には、結婚した時、20年以上前から住んでいます。
私が政治に関心を持ったきっかけは中学生のころに起きたロッキード事件でした。世の中がどういう仕組みで動いているのか知りたいと、法学部に行こうと決めました。実家の経済状況を考えて、自宅から通える国立大学ということで、一年浪人して九大に行きました。当時、法学部に女性はとても少なかったです。
大学卒業後、少しでも人の役に立てる仕事がしたいと県職員になりました。1986年、男女雇用機会均等法元年でした。女性上級職に対する期待は大きかったです。しかしお茶くみもしました。その後、出納長秘書を経て、筑豊の嘉穂福祉事務所で生活保護のケースワーカーとして4年間仕事をしました。ここでの経験が今の私をかたち作っているとも言えます。世の中は不公平で無情だ、そう思うことの多い4年間でした。私はできる限りのことを精一杯しましたが、生活保護制度の中で公務員としてできることは限られていて、救えなかったという思いは残りました。この前話をした人が自宅で亡くなっているのを発見するというショックなことが2度もありました。その後、人事課に配属になり、信頼できる上司、先輩、同僚と仕事をすることができ、組織というものを体感できた充実した5年間でした。
ただ、自分の力で何かしたいという思いもあり、県職員を辞め、学生時代に一度断念した司法試験にもう一度挑戦することにしました。35歳の時でした。その後結婚して子育てと法律の勉強を何年も続けましたが、残念ながら結果を出せず挫折しました。
2008年のリーマンショックで年越し派遣村に集まる人々の姿を見て、私も何かしなければと、ホームレスの支援をしているNPO法人の求人をインターネットで見つけて就職をしました。6年半で700人くらいの入所者の方たちと関わりました。女性の入所者の方もいました。
ホームレスというと働かない、怠けていると思われる方もいるかもしれませんが、ホームレスになる前は仕事をされており、怪我をした、病気になった、勤めていた会社が倒産した、ブラック企業から逃げ出した、など家を失った理由は様々でした。知的障害、発達障害に気づかれることなく、長年苦労してきた人も多かったです。つぎはぎだらけで貧弱な日本の制度では普通の人がいつどうなるかわからないのです。
私が大野城市長選挙に立候補しようと決意したのは、市内の女性たちと話をしていて、いまの大野城市政に市民の声が反映されていないと感じたことです。その理由の一つが中学校の給食問題です。多くの保護者が要望し、昨年3500筆を超える署名が提出されたにもかかわらず、中学校完全給食の実現に対して市は消極的な姿勢を示し続けています。なぜなのでしょう。市にお金がないわけではありません。現に20億円以上かけて「心のふるさと館」は建設されました。国の補助金などを工夫すれば、大野城市の今の財政で中学校の完全給食は実現可能だと思います。そういえば、私の娘が小学生だったころ、現職の井本市長が「弁当の方が母親の愛情を感じられる」と言われたことを覚えています。しかし時代は変わりました。大野城市では中学生の子どもを持つ家庭の7割が共働きです。保護者にとって毎朝の弁当作りの負担がどれほど大きいことか。貧困家庭の現実はより深刻です。弁当を作ってもらえない、パンやランチ代の200円、300円を持たせてもらえない、私は、井本市長には困っている市民の姿が見えていない、そう感じます。
また、大野城市は人口10万人の都市でありながら、16年もの間市長選挙が行われず連続無投票なのも問題です。前市長の3期12年を批判して市長になられた方が、16年、さらに20年も市長を続けようとするのはおかしいのではないでしょうか。トップが長年同じでは、異議や批判が言えなくなったり、なれ合いが生じたり、政治の緊張感が失われてしまいます。変えるタイミングではないか、その使命が私に与えられているのではないか、そう思い、自らを奮い立たせて市長選挙に挑戦することを決意しました。
政策については、まず、中学校の完全給食の実現を目指します。中学校に給食がないのは時代からずれていると思います。多くの女性が働いている現代、保育園の待機児童の解消だけでは子育て世代の支援として不十分です。皆さんは今回のコロナ禍でエッセンシャルワークの大切さに気付かれたと思います。看護師さん、保育士さん、学校の先生など、人と接するエッセンシャルワークに多くの女性が従事しています。しかし、仕事と子育ての両立はとても大変で、へとへとになり、仕事を辞めてしまう人も少なくありません。もったいないです。せめて完全給食を実現して、働く親御さんたちを支援したいと思います。少子高齢化の時代、働く女性を支えることは社会全体を支えること、そしてそれは、子どものいない方、子育ての終わった方をも支えることにもつながります。もちろん、給食は子どもたちのためというのが第一です。子どもたちの健康のため、お腹をすかせた子どもにみじめな思いをさせないために、主食、副食のそろった完全給食は必要だと思います。
二つ目は、タウンミーティングを行いたいと思います。市民の皆さんと直接対話をし、市民の皆さんに納得していただける、風通しの良い市政運営を行います。実際に選挙の準備を始めますと、長期井本市政の問題点をいくつも耳にするようになりました。市長は、反対する人、意見する人の声に耳を貸さない、私たちの健康に関わる水などの環境調査をきちんと行って情報を公開してほしい、県や国から違法と指摘されるような制度運営はやめてほしい、水道料が高いのはなぜなのか、市民の疑問や意見に耳を傾けてきちんと説明責任を果たしてほしい、大野城市を変えてほしいという声をたくさんいただきました。
話を聞いていただき、ありがとうございました。
私は、基本的には、タウンミーティングなどを行なって市民の要望を把握して、担当者、専門家の意見を聞いて政策を作り、議会で議論をしていただいて政策を進めていきたいと思っています。このことを前提に、政策についてお話しさせていただきます。
教育・文化というテーマをいただいて、これは市長が答えるべきテーマなのだろうかと少し悩みました。私は、市長は、教育や文化の内容に過度に関わるべきではなく、教育環境の整備に徹すべきだと思っています。
そのうえで、まず、学校教育の環境整備の一つとして、先ほど申し上げました中学校の完全給食を上げたいと思います。
それから、学校校舎に未だ残る中皮腫(ちゅうひしゅ)などの健康被害の原因となるアスベスト、石綿を、学校から完全に無くしたいと思います。防止措置はなされていると思いますが、ボールなどの衝撃や地震などで劣化して飛散し、健康に被害が及ぶ恐れがあるからです。
もう一つ、校舎の屋上に太陽光パネルを設置することを提案します。大野城市の小中学校もやっと空調設備が完了したとのことですが、近年の異常気象、猛暑の中では、熱中症予防のため適切にエアコンを使用することが推奨されているにもかかわらず、あまりエアコンを使わせてもらえないという話も聞きます。子どもを甘やかさないという考えなのか、電気代の節約のためかわかりませんが。
太陽光発電は、省エネだけの問題ではありません。快適な学習空間を確保するとともに、二酸化炭素の削減にも貢献し、さらに独立した電源を備えることによって校舎の避難所としての機能を高めることができると考えます。
小中学校には国の「GIGA スクール構想」すなわち情報通信技術を活用したICT教育の一環として、児童生徒1人1台のタブレットが与えられたとのことです。しかし、この施策は充分議論されて導入されたとは言えません。国がやると言うからやるというのでは説得力が全くありません。タブレットを使用した学習はほんとうに学習効果が上がるのか、スマホなどと合わせて端末機器を長時間使うことになり、健康、特に目の健康が保てるのか、脳への影響はないか、スマホ依存などの行為依存症が心配されています。電子機器を使うことの問題点、経済格差が通信環境格差につながり、学習格差につながらないか、電磁波も含め子どもの健康に影響はないか、などを充分研究して、子どもたちに使わせるべきです。
私は、タブレットの使用については、大野城市の子どもたちの生活実態に合わせて、独自のガイドライン、使用基準を作るべきだと考えます。
文化については、あえて申し上げれば、「大野城心のふるさと館」をもっと歴史の息吹を感じられる、歴史を活き活きとしっかりと学べる歴史資料館として有効活用したいと思います。私は歴史資料館などに行く方だと思いますが、「心のふるさと館」は、ユニークな施設という言い方もありますが、児童館の役割も持たせようとしているために、歴史を学ぶには私は物足りないと感じます。
また、「ふるさと館」で行なわれるイベントの中には、「まどかぴあ」と似たようなものがあるので、「まどかぴあ」との情報交換や調整が必要だと思います。
今回のコロナ禍で政治と暮らしが直結していると私たちに気づかせたのは、特に健康と福祉の分野ではないでしょうか。
ワクチン、自宅療養、給付金の支給などなど、コロナ関連の業務をされている職員の方々は本当に大変で多忙な業務をなさっていると思います。頭が下がります。ただ、このような危機に際しては、通常の職員配置に余裕が必要だったのだと言えます。効率優先、人件費の抑制のために職員数を切り詰め、全国的に見ても大野城市は人口あたりの職員数が少ないです。そのことが対応の遅れにつながっていないでしょうか?ムダはダメだけど余裕は必要。難しいことですが、適切な人数の正規職員の確保と配置を行ないたいと思います。
健康や福祉においては、困っている人不安がある人たちの方から助けを求める、相談しに来るのを待つだけでなく、困っている人を見つけ、職員がこちらから出向いていく、アウトリーチにも積極的に取り組むべきだと考えています。生活困窮者など困っている人の中には自ら声を上げることができない人もいます。いくら行政がさまざまなメニューを作っても、市の健康対策や福祉制度を知らない人もいます。ホームレスの支援で、福岡市では市から委託を受けた社会福祉士が外回りをしてホームレスの方を見つけ、話を聞き、その人に適した次の支援につないでいました。生活に困窮している人、健康に不安がある人を早期に発見して、できるだけ早く支援に結びつけたいと思います。その際、経験のある相談員さんの知識やネットワークが活きると思います。
それから、健康の土台となる体作りのために、食は大事です。ここでも子どもの健康のために給食が必要、できれば将来的には有機野菜などのより安全な食材を用いた給食を提供したいと思っています。高齢者についても栄養失調、低栄養が問題だと言われています。低栄養は認知症リスクを高めたり、免疫力を低下させたり、運動機能低下のリスクを高めたり、健康問題を引き起こすのではないかと言われています。社会福祉協議会の配食見守りサービスを拡充したいと考えます。
大野城市は東西に長い形で、交通網の整備も距離が長くなり難しい面がありますが、車、自家用車がなくても移動できる交通網を構築することが必要だと思います。今後、さらに高齢化が進むと考えられ、住宅地が広がる地区などでは、買い物に行くこと、買い物荷物を持って帰ること、それから市役所やまどかぴあなどの中心地に行くのも大変です。高齢者が自家用車を運転しなくても快適に生活できるように、公共交通網を見直さなければならない時期に来ていると考えます。現在のまどか号は、便数が少ないから不便、不便だから利用者が少ない、利用者が少ないから、便数が少ないという悪循環になっている気がします。ルートの見直しや、近隣自治体と相互乗り入れするなどして利便性を高め、利用者が増やし、便数を増やしてさらに利便性を高めたいと思います。公共交通網の整備は二酸化炭素の削減、カーボンニュートラルの実現にもつながります。さらに、発想を変えて、例えば、予約制でいいので、乗り合いバスや乗り合いタクシーなど、高齢者の足の確保を考えたいと思います。
全国で高齢ドライバーが引き起こす悲惨な交通事故がたびたび起こっています。しかし、大野城市には、高齢者の運転免許の返納を支援する施策もありません。移動手段の確保は、高齢者の福祉と、それから免許の返納を促し交通安全のために必要です。
先ほど福祉の所で述べた公共交通網の整備は、都市・建設のテーマにも入ると思います。
私は、交通網の整備とともに、通学路の安全確保、歩行者が安心して歩ける道作り、街作りを行ないたいと思います。
高度成長期から50年、これからは、大きな建物や大きな道路を作ることよりも、老朽化した社会インフラのメンテナンスをしなければならない時代であると私は考えます。
そのため、新しくあれを作るこれを建てるというような政策を、私は持っていません。中学校の給食室以外には。
今後の公共工事は、限られた予算の中で、私たちの生活を維持するために欠かせない、道路、上下水道、学校、施設などの社会インフラの補修管理、メンテナンス「第一」で取り組まなければならないと考えています。
そしてその際には、メンテナンスをていねいに、迅速に行なうために、地元の事業者が工事を受注できるようにする必要があると思います。それから、地元でお金が回るように、工事の発注を工夫して、公共工事に使うお金、市民が支払った税金が、地元に還元される、そのような地元経済の好循環を目指したいと思います。
災害に備え、河川の改修、護岸工事や、崖、斜面の崩落防止工事など防災工事は不可欠です。
ただ、災害を全て未然に防ぐことはできませんから、防災工事と平行して、避難所体制を整えておく必要があります。その際、学校の体育館や校舎も活用することになります。体育館の空調設備などを完備して、避難所として使えるようにしておく必要があると考えます。その場合、太陽光発電で独立した発電を確保しておくと、台風などで電線が切れ地域が停電したような場合も電気を使えるようにすることができます。近年は蓄電池も能力が格段に良くなり、逆に価格は下がっているとのことなので、災害時に充分役に立つと思います。また、各学校に給食設備を備えることは、炊き出しなどに利用することができると考えます。
少し都市・建設のテーマから逸れるかもしれませんが、災害においては、今回のコロナの対応でもわかるように、職員の人員に余裕が必要だと考えます。
加えて災害の場合は、職員自身も被災する可能性があるのですから、近隣自治体から職員の応援を得るなど、協力が必要になることも考えられます。私は、常日頃から近隣自治体と意見交換を行なって、協定を結ぶなどして、相互支援体制を作っておきたいと思います。
私の強みは様々な経験と、人に寄り添おうとする姿勢だと思います。女性として、生活者として、そしてボランティア活動などを通して、人の話を聞いて支えたり支えられたりすることを学んできました。私はやさしく、しなやかに、そして確実に、市民の皆さんの声を聞きながら、大野城市を変えていける自信があります。私ひとりで全てを決めるわけではありません。市民の皆さん、市議会議員の方々、職員の皆さん、外部の専門家の方々の意見を聞き、お知恵を借り、力を合わせて新しい大野城市を作っていく、その中心になりたいと思っています。
私はどこの組織にも属さない完全無所属です。様々なしがらみに囚われることなく、ひたすら市民目線の市政運営を行います。税金をどのように使うかは地元の市民が決めていくべきです。
皆さんはこのコロナ禍、既存の政治では問題を克服できないことを実感されたと思います。国の縦割り行政と違い、地方自治体は市民のくらしにより近く、より総合的でより柔軟な行政を行なうことができます。国と地方自治体は対等の関係と位置づけられています。地方の首長が国に対してもはっきりとものを言う、今、そのようなリーダーが求められています。国とのパイプを強調する政治は、もはや古いと言わざるを得ません。
選挙では「大切な一票」と言われます。しかし、大野城市では3回にわたり市長選挙が行なわれず、その大切な一票を行使する機会さえありませんでした。今回16年ぶりに選挙が行なわれます。ぜひ投票所に足を運んでください。子どもづれでも投票所に入れます。私はいつも子どもを連れて行っていました。子どもに社会の一員だと自覚してもらう良い機会だと思います。
今年は地元から政治を変えるチャンスです。若い人、多くの女性、困っている人、目の前の生活で手いっぱいの人、あきらめている人、今まで選挙に行かなかった人、声を上げてください。
ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
「大野城市長選挙 公開討論会」(全編)外部リンク
8月20日(金)18:30〜19:40
“YouTubeにてLIVE配信”
主催 ⼤野城市⻑選挙公開討論会実⾏委員会
共催 ⼤野城投票率あっぷの会
後援 ⼀般社団法⼈ 公開討論会⽀援リンカーン・フォーラム